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2009年03月25日

林道中止は世界の潮流

今日10時から本会議が開かれ、私たちが削除修正を求めていた予算案が否決をされました。大変残念です。私も林道開設部分においての削除修正案に賛成の立場から討論を行いました。以下、文章を転送いたします。
私は、甲第1号議案平成21年度沖縄県一般会計予算について、農林水産部予算にかかる林道開設費及び林道維持管理費について削除修正案に賛成の立場で、原案に反対の立場から討論をいたします。
この討論に先立ちまして先週末、私は民主党の同僚議員とヤンバルの森を視察して参りました。平成21年度予算案にも計上されている伊江原支線と伊江?号支線を初め、伊江原林道や仲井真知事も視察をされたチヌフク林道沿いにある国頭村有林収穫現場も訪れました。伊江原林道や国頭村有林収穫現場ではかなり近くの森の中からヤンバルクイナの鳴き声が聞こえてきました。また村有林収穫現場ではノグチゲラの営巣木があり、貴重動物が生息している間近にまで林道建設を進めたことを肌で感じることができました。こうした林道のあり方を見るにつけ、ヤンバルの森にこれ以上林道が必要なのかという疑問は自然と湧いてまいります。
私たちがその林道事業にかかる予算を削除修正する目的は、復帰後とりわけ1975年の海洋博以降に急速に建設されだした林道事業の功罪を検証し、ヤンバルの森に今後どのような事業が必要か立ち止まって考えることにあります。そのように至った理由は大きく三点ありますのでご説明いたします。
まず一点目は、林道開設事業は大規模な自然破壊に繋がっているということです。琉球諸島の森はわが国唯一の亜熱帯性気候の森林であり、とりわけヤンバルの森は貴重な動植物が生息している地域であります。世界自然遺産登録地の候補地として名前が上がっていることからも、名実ともに「人類の宝」「世界の宝」となっています。その宝である森を林道開設よって周辺において大規模な皆伐を実施し、動植物の生息地となっている沢という沢、尾根筋という尾根筋を分断させております。ある調査報告によると、伊江原林道総延長約2キロの間に少なくとも29の沢があり、それらが全て埋め尽くされているとのことであります。さらには事業で生じた残土を沢に捨て、埋めるということはまさにその宝を壊す行為に他なりません。そのことからも林道開設事業とそれに関わる事業は一旦中止すべきであると考えます。
続いて二点目は、林道開設は林道振興に効果を上げておらず、まさに公共事業のための公共事業であり、「持続可能な公共事業」となっています。
復帰後からこれまでこの北部地区への林道関係に費やした予算は約400億円と言われております。林業従事者の所得が約130万円前後にしかならないことが明らかになりました。林業所得や林業従事者数の推移を見れば林道事業によって林業振興が達成できたとは言えそうもありません。だからといって私たちは林業振興を否定する立場ではありません。しかし、本来ならば林業振興そのものに事業配分を優先させなければならないにもかかわらず、そのことを疎かにしていた県の林業政策は失敗に終わっています。そのことへの総括や反省がないまま、その失敗を林道事業で埋め合わせをしようとしているところに大きな問題があるのです。
一本の林道開設は、あたかも打出の小槌を振るかのように、その後の災害復旧事業や造林事業などの公共事業を生み出していきますが、その公共事業のサイクルを断ち切らなければならいないでしょう。
さらに三点目には、一点目、二点目の事実が県民には知られずにいることから、そのことをいい事に事実から目をそむけるなど、県の林道開設事業におけるその経過は不透明であり、県民に対しても誠実な対応をとっているとは言い難いのであります。
平成21度予算案で計上されている伊江原支線及び伊江?号支線の新規路線は、県が実施した調査でも伊江原支線において73種類、伊江?号支線でも77種類も貴重な動植物が生息していることが確認をされております。その貴重な動植物を保護するためにも慎重な態度をとるよう、県が設置・開催した林道建設環境調査検討委員会の委員からも指摘されています。さらに同じ知事部局の文化環境部からも先の2路線について、「計画中止をも含めて再度検討を」との意見も出されているのです。このように数々の指摘がされているにもかかわらず、林道事業を急ぐあまりに県が設置した林道建設環境調査検討委員会に最終会議を開かないまま答申案を委員長権限で提出させました。これらの経過を見るとこの検討委員会は結局事業再開に向けたアリバイ作りだったのではないかと指摘されてもおかしくありません。
また、答申の指摘事項をみても、委員から調査の妥当性、他の路線の開設の中止が提起をされたにもかかわらず、それらの意見を無視した形で北部森林計画を改定されました。さらにこの委員会からの知事への報告では、知事も視察をした伊江原支線は県道70号線を起点にした事業が望ましいとの事項がありましたが、県はその事業実施に反映させてはおりません。指摘事項を無視し、林道開設を推し進めようとする県の姿勢を容認するわけにはまいりません。こうした県の強引に事業を進める手法には、県が事業再開に向けて行うといった環境保全及び環境監視調査も掛け声倒れとなりそうで、真剣にそこに取り組む姿勢がないことが透けて見えてまいります。公共事業のあり方が市民から厳しい目線で問われているというこの時代で旧態然とした県の姿勢は理解できません。
以上の観点から林道事業の中止を求めるものでありますが、さらに大きな視点で考えると今、世界の潮流が持続可能な発展へと全地球的規模での取り組みが急がれていることは承知のことかと思います。その意味でヤンバルの森における林道事業を見直すということは、まさに世界の潮流を乗った取り組みとなるでしょう。林業振興という人間が作った目標だけでヤンバルの森を破壊しつくすあり方を見直し、自然保護と林業振興の観点からも自然と共生していく事業が必要ではないでしょうか。これまで県が進めてきた林道開設事業ではありますが、議員各位におかれましては勇気を持って一旦立ち止まり、今後のヤンバルの森の環境保全を共に考えていこうではありませんか。
議員各位のご賛同よろしくお願いいたします。



Posted by 上里ただし at 17:45│Comments(0)
 
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