
2008年12月30日
国境の島の消滅

今年もあと1日。
このブログをご覧いただいている方にも随分お世話になりました。
県議会になって特に議会が行われている間は、議会での活動に追われてしまいました。
その忙しさと反比例してブログに投稿する記事が少なくなってしまう傾向もあります。
反省しながらも来年度は頻繁に投稿できるよう努めて参ります。
さて、先日たちばな秀徳君の応援のため飛行機にのって移動したのですが、その機内で読んだ、
「誰も国境を知らない 西牟田 靖著」
がかなり印象的だったのでご紹介したいと思います。
著者はフリーライターで、日本の国境の島々を歩いてその報告を一冊にまとめております。
北は北方領土の国後島、色丹島、南は沖ノ鳥島、小笠原諸島、つい先日外務省のホームページへ韓国がその記述の削除要求をした竹島など、私たちにとって聞いたことのある島でありながらその島の様子をほとんど知らないという場所に行ってきた報告であります。
沖縄では与那国島と尖閣列島を取材をしております。尖閣列島にはもちろん上陸はできなかったものの、上陸をめぐっての海上保安庁とのやりとりはこの国の矛盾を感じさせてくれました。
沖縄県議となってからは沖縄の「県土」の保全と活用というものに着目をしていまして、尖閣列島などの問題もかなり注目しています。そうした中、先日周辺海域を訪れた久米島町の鳥島について、
写真でご覧いただければかすかに分かるように、演習によって陸地がけずられ海水に侵食されている箇所があります。
この島は現在米軍の実弾演習場となっておりますが、周辺海域が好漁場であるため地元の漁協と県漁連が返還を求めております。私が心配したのはこの島はこのまま放っておくとなくなってしまうのではないかということです。
仲井真知事も議会で、県土の保全としても返還を求めたいという趣旨を答弁されていたので、やはり同じ認識だろうと思って、今回11月議会で、鳥島が消滅してしまったら、排他的経済水域はどれだけ減るのかという質問を投げかけました。すると、
「わかりません」
というなんともふざけた答弁でしたので、どのように調べるのかと質すと、
「海上保安庁に確認中」とのことでした。後日、議会で正式に答弁があったのは、
「鳥島が消滅してしまえば排他的経済水域は減る。しかし、当該水域は中国側が主張している排他的経済水域に当るので答弁は差し控えたい」
とのことでした。
ちょっと待ってください。ここは誰の土地なんでしょうか。日本の土地であり、久米島町の島でもあります。その周辺海域が中国と係争しているところだから答弁を差し控えるというのは何事なのかと憤慨したものですが、それでもこの最近読み終わったその本を見ているといかに日本という国が領土問題で他国と争うのを避けようとしているのかがわかります。同じ国境の島である沖ノ鳥島には、東小島、北小島と呼ばれるほぼ岩礁に近い島によって、日本の領土面積と同じ規模となる38万平方キロメートルの排他的経済水域を得ることから、その海岸保全を国直轄として、これまで613億円も投じてきているのです。
一方では巨額な予算を投じて島を守り、その一方では消滅しつつある島を見捨て、その排他的経済水域を失おうとしています。
その矛盾、日本の国益というものは一体なんなのか国境の島にいると分からなくなってしまいます。
私たち沖縄は周囲を海に囲まれる島嶼地域であります。何をしようとも海を渡らなくてはなりません。その海は移動の手段だけでなく経済活動として大切な資源ともなっています。沖縄県の県益を考えれば当然、領海内の問題や排他的経済水域の問題を考えなければならないのですが、それに対応する部課もない状態です。
海に接して生きていくという運命を背負って生きていくしかない沖縄ですので、海に関する権益についてはしっかりと把握をしなければならないでしょう。
少し雑駁にはなりましたが来年度の課題として活動していきたいと思っています。
Posted by 上里ただし at 16:54│Comments(0)